「有害」の問題の前に「有害」かどうかの問題があったりして

日本人による健全なナショナリズムがあるんなら、同じく日本人による健全な反日ってのもあるんじゃなかろうか。


[書評]日本人とユダヤ人イザヤ・ベンダサン山本七平) Part 2 「極東ブログ」さんより
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2005/03/part_2.html

私は、現代の日本人は、この本を再読してほしいと思う。日本人がジェノサイド(民族大量虐殺)される危険性をまた日本人自らが撒き散らしている、あまりに愚かな現状があるのだから。
 彼は、1970年の時点で、こう語っている。


 「朝鮮戦争は、日本の資本家が(もけるため)たくらんだものである」と平気で言う進歩的日本人がいる。ああ何と無神経な人よ。そして世間知らずのお坊ちゃんよ。「日本人もそれを認めている」となったら一体どうなるのだ。その言葉が、あなたの子をアウシュビッツに送らないと誰が保証してくれよう。これに加えて絶対に忘れてはならないことがある。朝鮮人は口を開けば、日本人は朝鮮戦争で今日の繁栄をきずいたという。その言葉が事実であろうと、なかろうと、安易に聞き流してはいけない。


 日本人もまた、世界の他民族によって差別させられ危険な局面にも遭遇することがありうる。
 信頼できる者にも秘密を守るというのと類似の論理で、他国人といくら友好であっても、そこだけは口を割ってはいけないし、相手にもただしゃべらせるままにしておくだけではいけないという領域がある。
 そんなことは、多くの虐殺経験を持つ民族なら当たり前のことにように知っているのに日本人だけは、3月10日未明、一夜にして10万人の同胞が虐殺されても、いまだ知らないかのように見る。

自分なんかより遥かに聡明で知識豊富な方々が何故に日本に関するトンデモ歴史観にだけは軽くハマっちゃってたり、そっちよりの発言したりするんだろう?というのが自分の長年の謎だったんですが、このエントリーを読んで謎の一端が解けました。「目から鱗」というか「やっぱり」というか、ああそういうことなんですね。
しかし「極東ブログ」作者のfinalventさんは常日頃「ホロコースト」とか「南京事件」とかについては「タッチーな問題」であるとして核心への言及を避けていらっしゃるんですが、これっていきなりそれらを取り巻く議論の超核心への言及のような気が・・・大丈夫なのかなあ。ある意味「あった」「なかった」とか明言しちゃうよりやばいとこに踏み込んでるような・・・。単なる自分の誤読でしょうか?finalventさんの言いたいことは全く別だったりするのかも。


引用されている山本七平の文章を読んで連想したのは「性表現の氾濫が性犯罪を誘発している」とかその手の言説だったりする。「有害図書が青少年に悪影響を・・・」とかいうけどさ、「有害」ならそりゃ悪影響もあるだろうけど、その前に「有害」かどうかって検証はどうなってるんですか?って話。実際、性表現が氾濫してる現代の方が、その手の情報が少なかった昔より未成年による強姦事件が減ってるってデータもあるわけで、じつは「有害」どころか「有益」だったりする可能性もあるわけで、本当に規制しちゃったら「性犯罪増えちゃいましたあ!」ってことにもなりかねないわけで・・・
そんなわけで「『日本人もそれを認めている』となったら一体どうなるのだ。その言葉が、あなたの子をアウシュビッツに送らないと誰が保証してくれよう。」って言われても素直に同意できないっす。ゴメンなさい!
だって「『日本人は絶対それを認めようとしない』となったら一体どうなるのだ。その言葉が、あなたの子をアウシュビッツに送らないと誰が保証してくれよう。」って「if」も十分考えられるんじゃないかなあと思うのですよ。
立場は真逆だけど「ホロコーストに疑問をはさむ奴は絶対に許さん!」と雑誌を廃刊に追い込んだり、ツンデルを思想犯にしちゃったり*1してる「ユダヤ人圧力団体」の行動原理も、(やりかたに色々問題はあるにせよ)根っこは山本七平論理と同じだと思う。でも彼らの一連の行動が彼らの子孫をジェノサイドの危険性から遠ざけているようには見えないんだよなあ。逆に危なっかしくて見てるこっちまでハラハラさせられたりして。
「日本人がジェノサイド(民族大量虐殺)される危険性をまた日本人自らが撒き散らしている」の「日本人」って本当のところ「どっちの日本人」なんだろう。

*1:あ、ツンデルは違うか。